超自己満足小説
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交代の時間になったので、和希はエプロンを手に取った。
一組は喫茶店なので、ウェイター係は上にエプロンを身につける。
今流行のようなレースのついたタイプではないのを見ると、クラスの半分の人はガッカリした顔をした。
「なんでメイド服じゃねえの?」
「そんなもん着ないよ!」
それでもうっとりとした目で和希を眺める客の生徒に、席を案内した。
「和希、そろそろじゃない?」
「あ、もうそんな時間?」
守に声をかけられて、いそいそとエプロンを脱ぐ。
「ええ~?九条どこ行くの??」
「彼女んとこ!!」
和希は校門に向かって駆け出した。
「ごめんね。遅れちゃって。」
「ううん。それより、この学校すごいね。」
「そう?」
校門から見ると、グラウンドが広くとられているので大きく見えるのだろう。
美弥はきょろきょろと見回している。
少し癖のある髪が、背中でふわふわ動いている。
前に会ったときより、大人っぽくなったなあ。
背は・・・俺より少し小さいけど、俺も止まってるし、変わらないかな?
とても女の子らしくて、かわいい子だ。
和希は美弥を見て、女の子はこうじゃなきゃな、と思った。
「ねえ美弥、俺が来るまでに声かけられなかった?」
「う・・・2.3人に。『彼を待ってます』って言ったの。そしたら諦めて行っちゃった。」
くすくすと笑う。
「そうかあ、ごめんね。美弥に何かあったら、俺、秋生に怒られちゃう。」
秋生とは、美弥の幼馴染兼恋人だ。
「大丈夫だよー。でもね、ちょっとむくれてたかも。男子校に行くなんてって。今朝も着いて来そうだったけど振り切ってきた。」
「ほんと?悪いことしたなあ・・・。」
「いいの。秋生だって部活があるんだから。それに、和希のことをずっと心配してたのよ。こうやって私にできる事なら何でも言ってね。」
美弥はそう言うとまた笑った。
本当に、この子はいい子だ。優しいし、可愛いし。
その上しっかり者で、意志がはっきりしている。
父に立ち向かうなんて、俺には考えられなかったのに。
「案内するよ、こっち。」
和希はは美弥の手をとって歩き出した。
校内に入った途端、ざわめくのを感じた。
何だかみんな、和希たちを見てこそこそ小声で話している。
「こっち。俺のクラス、喫茶なんだ。」
美弥を案内する。
「いらっしゃい。和希の彼女さんだよね。話はよく聞いているよ。」
守がワザとらしいくらい大きな声で話しかけてきた。
他の客に混じって、席に座る。
「和希も、あれ着てたの?」
「ああ、エプロン?美弥が来るまではね。彼女が来たからって外れたんだ。」
「それじゃなくて・・・あっち。」
と、美弥が指したのは着ぐるみを着た小林。
「あ、あれは!客寄せとか言って・・・。ちょっとだけね。」
「ふうん、見たかったなあ・・・。」
二人で紅茶を頼み、ケーキを選ぶ。
「へーえ、本格的・・・。」
「でしょ。男でも甘いモノすきなの多いんだ。」
それから学校のこと、最近のことをざっと話して、席を立った。
「会計は後ででいいから、早く行け。」
純がぶっきらぼうに言う。
そして、小声で耳打ちした。
「学校中見せびらかしてこい。」
和希と美弥は、手をつないだまま校内を一巡りした。
近いとはいえない美弥の家に、遅くならないうちに帰ってもらうため、再び校門まで出た。
「ごめんね、送ってあげられなくて。俺も片づけが残ってるし。」
「いいの。駅まで一弥が来ているはずだから。」
一弥は美弥のお兄さんだ。
なぜ呼び捨てかというと、双子だから。
「そう、なら安心だ。」
それじゃあ、と言って、サヨナラをする。
一度帰りかけた美弥は、なぜか振り返って言った。
「和希、元気そうで良かった。学校も楽しそうだったし。私ね、ちょっと後悔してたの。私のせいで、和希が家を追い出されちゃったんじゃないかって。」
「そんなことはないよ。美弥が気にすることじゃない。」
「でも、きっかけはあれだったでしょ。だから、今日、本当に来てよかった。」
美弥は本当に嬉しそうに笑った。
「和希、家を出てよかった?」
「うん。今はそう思ってるよ。」
そう、と言って、美弥は向きを変えた。
そして今度こそ「さようなら、またね。」と言って歩き出した。
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一組は喫茶店なので、ウェイター係は上にエプロンを身につける。
今流行のようなレースのついたタイプではないのを見ると、クラスの半分の人はガッカリした顔をした。
「なんでメイド服じゃねえの?」
「そんなもん着ないよ!」
それでもうっとりとした目で和希を眺める客の生徒に、席を案内した。
「和希、そろそろじゃない?」
「あ、もうそんな時間?」
守に声をかけられて、いそいそとエプロンを脱ぐ。
「ええ~?九条どこ行くの??」
「彼女んとこ!!」
和希は校門に向かって駆け出した。
「ごめんね。遅れちゃって。」
「ううん。それより、この学校すごいね。」
「そう?」
校門から見ると、グラウンドが広くとられているので大きく見えるのだろう。
美弥はきょろきょろと見回している。
少し癖のある髪が、背中でふわふわ動いている。
前に会ったときより、大人っぽくなったなあ。
背は・・・俺より少し小さいけど、俺も止まってるし、変わらないかな?
とても女の子らしくて、かわいい子だ。
和希は美弥を見て、女の子はこうじゃなきゃな、と思った。
「ねえ美弥、俺が来るまでに声かけられなかった?」
「う・・・2.3人に。『彼を待ってます』って言ったの。そしたら諦めて行っちゃった。」
くすくすと笑う。
「そうかあ、ごめんね。美弥に何かあったら、俺、秋生に怒られちゃう。」
秋生とは、美弥の幼馴染兼恋人だ。
「大丈夫だよー。でもね、ちょっとむくれてたかも。男子校に行くなんてって。今朝も着いて来そうだったけど振り切ってきた。」
「ほんと?悪いことしたなあ・・・。」
「いいの。秋生だって部活があるんだから。それに、和希のことをずっと心配してたのよ。こうやって私にできる事なら何でも言ってね。」
美弥はそう言うとまた笑った。
本当に、この子はいい子だ。優しいし、可愛いし。
その上しっかり者で、意志がはっきりしている。
父に立ち向かうなんて、俺には考えられなかったのに。
「案内するよ、こっち。」
和希はは美弥の手をとって歩き出した。
校内に入った途端、ざわめくのを感じた。
何だかみんな、和希たちを見てこそこそ小声で話している。
「こっち。俺のクラス、喫茶なんだ。」
美弥を案内する。
「いらっしゃい。和希の彼女さんだよね。話はよく聞いているよ。」
守がワザとらしいくらい大きな声で話しかけてきた。
他の客に混じって、席に座る。
「和希も、あれ着てたの?」
「ああ、エプロン?美弥が来るまではね。彼女が来たからって外れたんだ。」
「それじゃなくて・・・あっち。」
と、美弥が指したのは着ぐるみを着た小林。
「あ、あれは!客寄せとか言って・・・。ちょっとだけね。」
「ふうん、見たかったなあ・・・。」
二人で紅茶を頼み、ケーキを選ぶ。
「へーえ、本格的・・・。」
「でしょ。男でも甘いモノすきなの多いんだ。」
それから学校のこと、最近のことをざっと話して、席を立った。
「会計は後ででいいから、早く行け。」
純がぶっきらぼうに言う。
そして、小声で耳打ちした。
「学校中見せびらかしてこい。」
和希と美弥は、手をつないだまま校内を一巡りした。
近いとはいえない美弥の家に、遅くならないうちに帰ってもらうため、再び校門まで出た。
「ごめんね、送ってあげられなくて。俺も片づけが残ってるし。」
「いいの。駅まで一弥が来ているはずだから。」
一弥は美弥のお兄さんだ。
なぜ呼び捨てかというと、双子だから。
「そう、なら安心だ。」
それじゃあ、と言って、サヨナラをする。
一度帰りかけた美弥は、なぜか振り返って言った。
「和希、元気そうで良かった。学校も楽しそうだったし。私ね、ちょっと後悔してたの。私のせいで、和希が家を追い出されちゃったんじゃないかって。」
「そんなことはないよ。美弥が気にすることじゃない。」
「でも、きっかけはあれだったでしょ。だから、今日、本当に来てよかった。」
美弥は本当に嬉しそうに笑った。
「和希、家を出てよかった?」
「うん。今はそう思ってるよ。」
そう、と言って、美弥は向きを変えた。
そして今度こそ「さようなら、またね。」と言って歩き出した。
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プロフィール
HN:
綾部 叶多
性別:
非公開