超自己満足小説
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「お疲れ。」
「・・・待ってたのか。」
「うん。」
今日も練習後の純を待って、寮へ帰る。
日が短くなり始め、暑さも緩んできた。
約一年のブランクがあったが、だいぶ調子を取り戻してきた純は、冬の大会から出られるよう調整しているとの事だ。
「足りないだろ?俺のも食べていいよ。」
「さんきゅ。」
純の皿に、切り分けた肉を移す。
いっぱい食べて、いっぱい活躍してもらわないと。
夕食を一緒に食べながら、他愛ない話をする。
「・・・暑いな・・・。」
部屋に戻ると、締め切っていた窓を開け、純が一階のベッドに横たわった。
「ちょっと・・・俺の布団、汗臭いよ?」
「そうか?」
くんくんとわざとらしく匂いをかぐ純。
「わっ、やめてよ!」
「別に臭くないぞ。・・・いい匂いがする。」
「うそ!シャンプーかな?どっちにしても、やだな・・・。」
和希の、甘い匂い。
純は密かに、(やっぱり男とは違うんだな)と感じていた。
和希と初めて会った時のことを思い出す。
一緒にいた女の不快な態度にいらだって、早々と帰ってきたときのことだった。
緊張した面持ちでこちらに振り向いた、小柄な少年。
にこにこと笑いながらも、時折不安げな表情をするのが気になり、面倒を見るつもりもなかったのに気付くといつも連れ歩いていた。
魅かれたのは、あの瞳だ。
何もかも見透かすような、黒く澄んだ瞳。
見つめられると、自分の心の奥まで覗かれているような気分になる。
実際、本心を読まれていたのだが。
素直じゃなかった自分を、救い上げてくれたのだ。
少女だと知っても、それまでと態度を変えるつもりはなかったが、もう少し自覚してくれてもいいものを、とも思う。
やきもきしているのは俺だけか。
『純も守も、大切な友達だから。』
そう言われるたびに、沸き起こる不思議な感情。
『今まで生きてきて、今が最高に楽しいよ。』
心底嬉しそうな笑顔で話されると、(かわいいじゃねえか)と思ってしまう。
「ねえ、俺、寝たいんだけど。」
ふと気付くと、すでに就寝用の服に着替えた和希が、純を見下ろしていた。
「ああ、わりい。」
「疲れてるんだね、ほら。」
和希が手を差し出すので、それにつかまり立ち上がろうとする。
が、力の差で、和希が純の上に倒れこんできた。
「うわ!」
「あぶね!」
和希の体を支えようと腕を伸ばす。
ふわり。
腕に包んだ和希の体は、思ったより細く、柔らかく。
「ごめん。」
あわてて離れようとするのを少し強めに抱き寄せてみた。
「大丈夫、離しても平気だよ。」
「そうか。」
もう一度「ごめんね」と謝って布団にもぐる和希。
その様子を見て、純は首を左右に振った。
もう、男とか女とか、関係ない。
ただ、こいつを大切に思う。
この関係がずっと続くことを、純は望んでいた。
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「・・・待ってたのか。」
「うん。」
今日も練習後の純を待って、寮へ帰る。
日が短くなり始め、暑さも緩んできた。
約一年のブランクがあったが、だいぶ調子を取り戻してきた純は、冬の大会から出られるよう調整しているとの事だ。
「足りないだろ?俺のも食べていいよ。」
「さんきゅ。」
純の皿に、切り分けた肉を移す。
いっぱい食べて、いっぱい活躍してもらわないと。
夕食を一緒に食べながら、他愛ない話をする。
「・・・暑いな・・・。」
部屋に戻ると、締め切っていた窓を開け、純が一階のベッドに横たわった。
「ちょっと・・・俺の布団、汗臭いよ?」
「そうか?」
くんくんとわざとらしく匂いをかぐ純。
「わっ、やめてよ!」
「別に臭くないぞ。・・・いい匂いがする。」
「うそ!シャンプーかな?どっちにしても、やだな・・・。」
和希の、甘い匂い。
純は密かに、(やっぱり男とは違うんだな)と感じていた。
和希と初めて会った時のことを思い出す。
一緒にいた女の不快な態度にいらだって、早々と帰ってきたときのことだった。
緊張した面持ちでこちらに振り向いた、小柄な少年。
にこにこと笑いながらも、時折不安げな表情をするのが気になり、面倒を見るつもりもなかったのに気付くといつも連れ歩いていた。
魅かれたのは、あの瞳だ。
何もかも見透かすような、黒く澄んだ瞳。
見つめられると、自分の心の奥まで覗かれているような気分になる。
実際、本心を読まれていたのだが。
素直じゃなかった自分を、救い上げてくれたのだ。
少女だと知っても、それまでと態度を変えるつもりはなかったが、もう少し自覚してくれてもいいものを、とも思う。
やきもきしているのは俺だけか。
『純も守も、大切な友達だから。』
そう言われるたびに、沸き起こる不思議な感情。
『今まで生きてきて、今が最高に楽しいよ。』
心底嬉しそうな笑顔で話されると、(かわいいじゃねえか)と思ってしまう。
「ねえ、俺、寝たいんだけど。」
ふと気付くと、すでに就寝用の服に着替えた和希が、純を見下ろしていた。
「ああ、わりい。」
「疲れてるんだね、ほら。」
和希が手を差し出すので、それにつかまり立ち上がろうとする。
が、力の差で、和希が純の上に倒れこんできた。
「うわ!」
「あぶね!」
和希の体を支えようと腕を伸ばす。
ふわり。
腕に包んだ和希の体は、思ったより細く、柔らかく。
「ごめん。」
あわてて離れようとするのを少し強めに抱き寄せてみた。
「大丈夫、離しても平気だよ。」
「そうか。」
もう一度「ごめんね」と謝って布団にもぐる和希。
その様子を見て、純は首を左右に振った。
もう、男とか女とか、関係ない。
ただ、こいつを大切に思う。
この関係がずっと続くことを、純は望んでいた。
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プロフィール
HN:
綾部 叶多
性別:
非公開