超自己満足小説
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守は優しい。前から優しかったけど、なんだか最近は特に。
俺が言うのも変だけど、良いとこのお坊っちゃんだって聞いてる。
だからかなぁ、紳士的なしぐさが身についている感じだ。
車道側を歩いてくれるし、重たいものは持ってくれる。
ドアも支えていてくれるし、高いところのものを取ってくれる。
・・・て、あれ?なんか俺、女の子扱いされてない??
「和希、デートしよう。」と守に言われ、朝早くに寮を出た。
良く晴れてて気持ちのいい朝だ。
「どこいくの?」
手なんかつながれちゃって。
俺、こういうの慣れてないんだ。
それでも守は黙って、俺を引っ張って歩いていく。
ねぇ、いったいどこに行く気?
すると守は、ある店の中に入っていった。
なになに?こんなとこに、用事あるの?
「さえこさん、よろしくお願いします。」
守はそう言うと、俺をその女性に引き渡した。
さえこさんと呼ばれた女性は、素敵な営業スマイルで俺を眺め、店の棚からいろいろな服を取り出してきた。
ああだこうだとされるがままにされ、気付くと俺は女装させられていた。
ちょ、ちょっと、なんだよこれ。
ちらっと守を睨むと、守は満面の笑みで近寄ってきた。
「かわいいよ、和希。」
守はとても嬉しそうに言った。
「これが君の、本来の姿だよ。」
そして、そのまま店の外へ連れ出された。
あの、すっごい恥ずかしいんですけど。
いくら本来女子だからって、コスプレする並に恥ずかしい。
着ぐるみの方がまだましだ。
うつむいたまま、守に手をひかれて歩く。
もう周りなど見る余裕はなくなっていた。
話題の映画を見て、公園に立ち寄る。
何か飲むかと聞かれ、その時やっと、喉が渇いていることに気づいた。
お茶を買いに行った守の背中を見送り、ぼんやりと足元を眺める。
俺、なんてカッコしてんだろう。
本来の姿か。
本当に、女として育てられてたら、どうなっていたんだろう。
ふとそのような考えが浮かぶ。
・・・隠し事をしながら生きていくのはちょっと辛い。
やっと秘密を共有できる人ができたんだ。
大切な友達。
友情って、大事な栄養素なんだな。
あれこれ物思いに耽っていると、ふいに腕を捕まれた。
視界がかげって、守の顔が飛び込んでくる。
「?!」
唇に柔らかな感触。
は?なに?
キス、されてる。
「わ、ちょっと」
「悪い。」
唇を離した守は、そう言いながらも俺を抱きすくめて言った。
「守りたい。和希の力になりたい。」
耳元に唇を寄せてささやいた。
「好きだよ、和希。」
あああ。
今の俺、すっごい驚いた顔してると思う。
身体を離した守は、俺の顔を覗きこんだ。
「俺じゃ、ダメかな?」
守は俺が、拒絶したと思ったのか。
苦しそうな顔をしている。
「・・・違うよ、ダメとかそんなんじゃない。ただ、俺は・・・男として育ってるから、男の人を恋愛対象として見られないんだと思う。多分。」
そう言うと、守はそうか、と言って悲しげに笑った。
守の手が、俺の頭を撫でる。
優しくて、心地良い。
でも、やっぱり・・・。
女の子扱いされるのに慣れていない俺には、気恥ずかしかった。
「寒くなってきたね。帰ろうか。」
守の言葉に頷いて、寮への道を急ぐ。
途中で着替え、いつもの姿に戻る。
「これ・・・」
服の入った紙袋を差し出す。
「それはプレゼントだよ。」
「こんな高そうな服、もらえないよ。」
守はくすり、と笑って言った。
「実はあそこ、俺の親の店なんだ。だから遠慮はいらないんだよ。」
そう言うと、俺の顔を見つめて、口を開いた。
「俺には、初めて会ったときから、女の子にしか見えなかった。自分がおかしいんじゃないかって、悩んだときもあったよ。和希の話を聞いて、ますます好きになったんだ。和希の力になりたいんだ。和希を助けたい。だからもっと、俺を頼って。」
・・・嬉しい。支えてくれる人がいる。でも・・・。
俺は守の気持ちに応えることはできなかったけど、この素敵な親友を見つけたんだ。
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俺が言うのも変だけど、良いとこのお坊っちゃんだって聞いてる。
だからかなぁ、紳士的なしぐさが身についている感じだ。
車道側を歩いてくれるし、重たいものは持ってくれる。
ドアも支えていてくれるし、高いところのものを取ってくれる。
・・・て、あれ?なんか俺、女の子扱いされてない??
「和希、デートしよう。」と守に言われ、朝早くに寮を出た。
良く晴れてて気持ちのいい朝だ。
「どこいくの?」
手なんかつながれちゃって。
俺、こういうの慣れてないんだ。
それでも守は黙って、俺を引っ張って歩いていく。
ねぇ、いったいどこに行く気?
すると守は、ある店の中に入っていった。
なになに?こんなとこに、用事あるの?
「さえこさん、よろしくお願いします。」
守はそう言うと、俺をその女性に引き渡した。
さえこさんと呼ばれた女性は、素敵な営業スマイルで俺を眺め、店の棚からいろいろな服を取り出してきた。
ああだこうだとされるがままにされ、気付くと俺は女装させられていた。
ちょ、ちょっと、なんだよこれ。
ちらっと守を睨むと、守は満面の笑みで近寄ってきた。
「かわいいよ、和希。」
守はとても嬉しそうに言った。
「これが君の、本来の姿だよ。」
そして、そのまま店の外へ連れ出された。
あの、すっごい恥ずかしいんですけど。
いくら本来女子だからって、コスプレする並に恥ずかしい。
着ぐるみの方がまだましだ。
うつむいたまま、守に手をひかれて歩く。
もう周りなど見る余裕はなくなっていた。
話題の映画を見て、公園に立ち寄る。
何か飲むかと聞かれ、その時やっと、喉が渇いていることに気づいた。
お茶を買いに行った守の背中を見送り、ぼんやりと足元を眺める。
俺、なんてカッコしてんだろう。
本来の姿か。
本当に、女として育てられてたら、どうなっていたんだろう。
ふとそのような考えが浮かぶ。
・・・隠し事をしながら生きていくのはちょっと辛い。
やっと秘密を共有できる人ができたんだ。
大切な友達。
友情って、大事な栄養素なんだな。
あれこれ物思いに耽っていると、ふいに腕を捕まれた。
視界がかげって、守の顔が飛び込んでくる。
「?!」
唇に柔らかな感触。
は?なに?
キス、されてる。
「わ、ちょっと」
「悪い。」
唇を離した守は、そう言いながらも俺を抱きすくめて言った。
「守りたい。和希の力になりたい。」
耳元に唇を寄せてささやいた。
「好きだよ、和希。」
あああ。
今の俺、すっごい驚いた顔してると思う。
身体を離した守は、俺の顔を覗きこんだ。
「俺じゃ、ダメかな?」
守は俺が、拒絶したと思ったのか。
苦しそうな顔をしている。
「・・・違うよ、ダメとかそんなんじゃない。ただ、俺は・・・男として育ってるから、男の人を恋愛対象として見られないんだと思う。多分。」
そう言うと、守はそうか、と言って悲しげに笑った。
守の手が、俺の頭を撫でる。
優しくて、心地良い。
でも、やっぱり・・・。
女の子扱いされるのに慣れていない俺には、気恥ずかしかった。
「寒くなってきたね。帰ろうか。」
守の言葉に頷いて、寮への道を急ぐ。
途中で着替え、いつもの姿に戻る。
「これ・・・」
服の入った紙袋を差し出す。
「それはプレゼントだよ。」
「こんな高そうな服、もらえないよ。」
守はくすり、と笑って言った。
「実はあそこ、俺の親の店なんだ。だから遠慮はいらないんだよ。」
そう言うと、俺の顔を見つめて、口を開いた。
「俺には、初めて会ったときから、女の子にしか見えなかった。自分がおかしいんじゃないかって、悩んだときもあったよ。和希の話を聞いて、ますます好きになったんだ。和希の力になりたいんだ。和希を助けたい。だからもっと、俺を頼って。」
・・・嬉しい。支えてくれる人がいる。でも・・・。
俺は守の気持ちに応えることはできなかったけど、この素敵な親友を見つけたんだ。
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プロフィール
HN:
綾部 叶多
性別:
非公開