超自己満足小説
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守はふと、斜め前の背中が揺らめいているのに気づいた。
珍しい。眠いのかな?
思わず笑みがこぼれる。
しばらくして、どうも様子が変だと気づく。
不意にぐらり、と傾いて、和希の体が仰け反った。
「危ない!」
とっさに手を伸ばし、背中を受け止める。
椅子が倒れて激しく鳴った。
「和希!!」
守の呼びかけに、和希は目を薄く開けたが、すぐに閉じてしまった。
手を回して抱きかかえる。
「保健室、連れて行ってきます。」
教師に告げて、教室を後にした。
保健室には誰もいなかった。
仕方なくベッドに寝かせ、タイを緩めた。
こういうときは体を拘束しているものを外してやるのだ。
ワイシャツのボタンをひとつひとつ外していく。
なんだかおかしい。
鎖骨が見え、その下にサポーターのようなものが見えた。
怪我でもしてる?
手を伸ばそうとしたその時、男子にはあるはずのない、小さなふくらみに気づいた。
「うそ・・・だろ・・・?」
「・・・・・う・・・ん・・・」
胸元を、何かが這っている感触がしていた。
ここは、どこだ?
そうか、僕は授業中に倒れて・・・。
和希の視界が、次第に開けてきた。
目の前に、ものすごく驚いた顔が見えた。
「まもる?」
その顔に向かって呼びかけた。
意識が急浮上する。
「ごめん、服を緩めようと思って・・・。」
やけにスースーする自分の胸元を見て、和希は一瞬で凍りついた。
これは、本当にまずい。
どうやって誤魔化そう。
ぐるぐる頭を回転させるが、うまい言い訳が出てこない。
もうだめかもしれない。
和希がそう思い始めたとき、ふと、頭に浮かんだ言葉。
「誰にも言わないでほしい。」
下手に言い訳するよりむしろ、正直に言ってしまったほうがいい。
半ばヤケになりながら、守の顔をじっと見つめて言った。
守は困惑した顔をしている。
そりゃあそうだよな。いくらなんだって・・・。
「事情を話してくれないか。」
守は和希をじっと見つめたまま、真剣なまなざしで言った。
和希も驚いて、見つめ返す。
「・・・黙っててくれるの?」
和希はこれまでの経緯を、守に話した。
最後まで、守は黙って聞いていた。
「・・・だから、黙っててほしいんだ・・・。」
和希が訴えるように守の顔を覗き込んだ。
「帰れないんだ。帰っても・・・居場所がない。」
「大丈夫だよ、約束する。」
守は頷いた。ほっとした和希は、ふんわりと笑みを浮かべた。
保険医の橋本が来て、和希に「貧血でしょう」と言った。
和希は、しばらく休んでから保健室を後にした。
教室で出迎えた守に、
「ありがとう。」
と言って微笑んだ。
守はそっと手を伸ばして、和希の頭をぽんぽんと叩いた。
守はほっとしていた。
あんなに悩んでいたのが、あっという間に晴れ渡ったみたいだ。
和希の秘密を知れたことで、自分自身を取り戻せた気分だった。
それにしても。
和希の親は、いったい何を考えているんだ?
まだ14歳(彼女は4月1日生まれ)の少女を、男子校にぶち込むなんて。
ある意味、虐待だろ。
どれだけ心細い思いをしているのか。
誰にも頼ることもできずに。
「帰る場所なんてないんだ。」
小さく笑った顔が焼きついて離れない。
守は拳を握って、和希のことを思った。
俺が、もっと大人だったら。
俺に、彼女を支える力があったら。
もっと力になってあげることができたのに。
まだ15の今の俺にできること。
それは、この子の秘密を守ること。
守はさらに力をこめて、掌を握り締めた。
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珍しい。眠いのかな?
思わず笑みがこぼれる。
しばらくして、どうも様子が変だと気づく。
不意にぐらり、と傾いて、和希の体が仰け反った。
「危ない!」
とっさに手を伸ばし、背中を受け止める。
椅子が倒れて激しく鳴った。
「和希!!」
守の呼びかけに、和希は目を薄く開けたが、すぐに閉じてしまった。
手を回して抱きかかえる。
「保健室、連れて行ってきます。」
教師に告げて、教室を後にした。
保健室には誰もいなかった。
仕方なくベッドに寝かせ、タイを緩めた。
こういうときは体を拘束しているものを外してやるのだ。
ワイシャツのボタンをひとつひとつ外していく。
なんだかおかしい。
鎖骨が見え、その下にサポーターのようなものが見えた。
怪我でもしてる?
手を伸ばそうとしたその時、男子にはあるはずのない、小さなふくらみに気づいた。
「うそ・・・だろ・・・?」
「・・・・・う・・・ん・・・」
胸元を、何かが這っている感触がしていた。
ここは、どこだ?
そうか、僕は授業中に倒れて・・・。
和希の視界が、次第に開けてきた。
目の前に、ものすごく驚いた顔が見えた。
「まもる?」
その顔に向かって呼びかけた。
意識が急浮上する。
「ごめん、服を緩めようと思って・・・。」
やけにスースーする自分の胸元を見て、和希は一瞬で凍りついた。
これは、本当にまずい。
どうやって誤魔化そう。
ぐるぐる頭を回転させるが、うまい言い訳が出てこない。
もうだめかもしれない。
和希がそう思い始めたとき、ふと、頭に浮かんだ言葉。
「誰にも言わないでほしい。」
下手に言い訳するよりむしろ、正直に言ってしまったほうがいい。
半ばヤケになりながら、守の顔をじっと見つめて言った。
守は困惑した顔をしている。
そりゃあそうだよな。いくらなんだって・・・。
「事情を話してくれないか。」
守は和希をじっと見つめたまま、真剣なまなざしで言った。
和希も驚いて、見つめ返す。
「・・・黙っててくれるの?」
和希はこれまでの経緯を、守に話した。
最後まで、守は黙って聞いていた。
「・・・だから、黙っててほしいんだ・・・。」
和希が訴えるように守の顔を覗き込んだ。
「帰れないんだ。帰っても・・・居場所がない。」
「大丈夫だよ、約束する。」
守は頷いた。ほっとした和希は、ふんわりと笑みを浮かべた。
保険医の橋本が来て、和希に「貧血でしょう」と言った。
和希は、しばらく休んでから保健室を後にした。
教室で出迎えた守に、
「ありがとう。」
と言って微笑んだ。
守はそっと手を伸ばして、和希の頭をぽんぽんと叩いた。
守はほっとしていた。
あんなに悩んでいたのが、あっという間に晴れ渡ったみたいだ。
和希の秘密を知れたことで、自分自身を取り戻せた気分だった。
それにしても。
和希の親は、いったい何を考えているんだ?
まだ14歳(彼女は4月1日生まれ)の少女を、男子校にぶち込むなんて。
ある意味、虐待だろ。
どれだけ心細い思いをしているのか。
誰にも頼ることもできずに。
「帰る場所なんてないんだ。」
小さく笑った顔が焼きついて離れない。
守は拳を握って、和希のことを思った。
俺が、もっと大人だったら。
俺に、彼女を支える力があったら。
もっと力になってあげることができたのに。
まだ15の今の俺にできること。
それは、この子の秘密を守ること。
守はさらに力をこめて、掌を握り締めた。
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プロフィール
HN:
綾部 叶多
性別:
非公開