超自己満足小説
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冬休みが開けると、すぐに学年末考査がやってくる。
高等部への進級試験も兼ねているので、範囲は広く、急に試験勉強をしたところで間に合うはずもない。
一応名の通った進学校として知られる清学は、単純なエスカレーターではなく、振り落とされる生徒も出てくる。
高等部から入学してくる者もいるので、結果的に生徒数は変わらないようになっている。
3年間首席をキープしてきた守にとっては、試験など難関でもなんでもない。
いつもどおり返ってきた答案用紙に×印がないのを見て取ると、守は斜め前に座る小さな背中を見つめた。
ふいに、その背中が振り返る。
「ねえ、ここなんだけど・・・。」
和希は片手に赤ペンを握ったまま、守に尋ねた。
「これ、どこが間違ってる?」
解答は合っているのに、途中の式が違っていたようだ。
「これじゃなんでだめなの?」
「ダメではいないけど、こっちのほうがより早く導けるから、だと思うよ?」
「ふうん・・・。」
あまり納得していないような返事になる。
「・・・答えは同じなのにね。」
守はその顔を見つめたまま、小さくため息をついた。
どうしても、“彼”が女の子にしか見えない。
守は近頃ずっと悩んでいた。
好みのタイプだったんだろうか。
男子校とはいえ、すぐ近くにほかの学校もあるし、部活などで交流もある。
親の仕事柄、子供のころから回りに女ばかりいたっていうのに。
守の双子の弟は、根っからナンパな男なので、よくもてる。
そういう守も、同じ顔をしているので、女に免疫がないわけではない。
中学生にしては背がすらりと高く、大人びて見える顔立ちは内面の賢さを映している。
人目を引くタイプなのだ。
なのになぜか、“彼”のことばかり気になって、気づくと目で追っていた。
肌の白さやまつげの長さで、性別を決めるわけじゃない。
背だって守よりは確かに小さいが、まだ中学生だし、これから伸びる要素もあるだろう。
ここは男子校だぞ。
つまり彼は男だ。
フィクションの世界では、よく性別を誤魔化してということがあるが、現実にそれはありえない。
守の悩みは尽きなかった。
念のため、“彼”の身元調査をさせてもらった。
生徒会長の公権横領だ。
提出された戸籍に『男』とあって、やっぱり、と肩を落とした。
まだまだ肌寒い日が続いていた、3月の始めごろ。
朝から雨が降っていた。
高等部への進級も決まって、授業も教科書を消化する程度となっていた。
和希がいつものようにぼんやり授業を受けていると、見えていたはずの先生の顔が次第にかすんできた。
「あ、れ?」
急激に目の前が暗くなった。
ぐらり。
頭から力が抜ける。
あぁ、まずい。
和希は手を伸ばして、何かをつかもうとした。
が、何もつかめない。
ガタン!!
座っていたはずの椅子が倒れ、和希の体が床に打ち付けられる。
・・・あれ?痛くないぞ?
誰かに名前を呼ばれた気がした。
和希は返事も出来ず、そのまま意識を失った。
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高等部への進級試験も兼ねているので、範囲は広く、急に試験勉強をしたところで間に合うはずもない。
一応名の通った進学校として知られる清学は、単純なエスカレーターではなく、振り落とされる生徒も出てくる。
高等部から入学してくる者もいるので、結果的に生徒数は変わらないようになっている。
3年間首席をキープしてきた守にとっては、試験など難関でもなんでもない。
いつもどおり返ってきた答案用紙に×印がないのを見て取ると、守は斜め前に座る小さな背中を見つめた。
ふいに、その背中が振り返る。
「ねえ、ここなんだけど・・・。」
和希は片手に赤ペンを握ったまま、守に尋ねた。
「これ、どこが間違ってる?」
解答は合っているのに、途中の式が違っていたようだ。
「これじゃなんでだめなの?」
「ダメではいないけど、こっちのほうがより早く導けるから、だと思うよ?」
「ふうん・・・。」
あまり納得していないような返事になる。
「・・・答えは同じなのにね。」
守はその顔を見つめたまま、小さくため息をついた。
どうしても、“彼”が女の子にしか見えない。
守は近頃ずっと悩んでいた。
好みのタイプだったんだろうか。
男子校とはいえ、すぐ近くにほかの学校もあるし、部活などで交流もある。
親の仕事柄、子供のころから回りに女ばかりいたっていうのに。
守の双子の弟は、根っからナンパな男なので、よくもてる。
そういう守も、同じ顔をしているので、女に免疫がないわけではない。
中学生にしては背がすらりと高く、大人びて見える顔立ちは内面の賢さを映している。
人目を引くタイプなのだ。
なのになぜか、“彼”のことばかり気になって、気づくと目で追っていた。
肌の白さやまつげの長さで、性別を決めるわけじゃない。
背だって守よりは確かに小さいが、まだ中学生だし、これから伸びる要素もあるだろう。
ここは男子校だぞ。
つまり彼は男だ。
フィクションの世界では、よく性別を誤魔化してということがあるが、現実にそれはありえない。
守の悩みは尽きなかった。
念のため、“彼”の身元調査をさせてもらった。
生徒会長の公権横領だ。
提出された戸籍に『男』とあって、やっぱり、と肩を落とした。
まだまだ肌寒い日が続いていた、3月の始めごろ。
朝から雨が降っていた。
高等部への進級も決まって、授業も教科書を消化する程度となっていた。
和希がいつものようにぼんやり授業を受けていると、見えていたはずの先生の顔が次第にかすんできた。
「あ、れ?」
急激に目の前が暗くなった。
ぐらり。
頭から力が抜ける。
あぁ、まずい。
和希は手を伸ばして、何かをつかもうとした。
が、何もつかめない。
ガタン!!
座っていたはずの椅子が倒れ、和希の体が床に打ち付けられる。
・・・あれ?痛くないぞ?
誰かに名前を呼ばれた気がした。
和希は返事も出来ず、そのまま意識を失った。
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プロフィール
HN:
綾部 叶多
性別:
非公開