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樋口要は、このたび人生最大の努力をした。
自分の持ち得る力を最大限に発揮して、終いには熱を出して寝込むまで頑張った。
両親や姉は、「受験のときにだって、あんなに集中しなかったのにね・・・」と呆れ顔を隠さず、寝込んでしまった彼を「この歳になって知恵熱出すなんて」と笑った。
ああ、何とでも言ってくれ。
やるだけのことはやったのだ、あとは結果を待つのみだ。
いつもなら気を抜けるはずの期末考査後の休日を、樋口は祈るようにして過ごしたのだった。
この学校は、選択科目だけではなく成績順にクラスが決まる。
樋口は彼と同じクラスになるために、彼の選択科目をさりげなくリサーチし、かつ優秀な彼と同じくらいの成績を取るため、部活をサボってまで勉強をしたのだ。
「おおおすげえ・・・」
掲示板に載った自分の名前を見て、樋口は驚いた。
「宮城と並んだよ・・・すげえ・・・」
彼と仲の良い宮城純と同点の26位だ。
生まれて初めて、自分で自分を褒めてやった。
1クラス40人だから、これなら余裕で一組に入れるかな?
「ええと、和希は・・・。」
樋口は彼、九条和希の名を探した。
あったあった。・・・7位??
すげえ、前より上になってるよ。
トップの日下守とは4点しか変わらない。
部活をやってないとはいえ、すげえなあ・・・。
かわいい顔して頭良いなんて、ますます俺と釣り合わない・・・って、あいつは男だって!
一人で表情をコロコロ変える樋口を、周りが気味悪がって避けていたのは言うまでもない。
新学期を迎え、二年生になった。
「やったあ、和希とおんなじクラス♪」
「あはは。樋口と一緒だ。一年間よろしくね。」
にっこりと微笑む和希。
今日もかわいいのう。
樋口はそれはもう天にも昇る気持ちだった。
高校の2年生といえば、まだ受験の心配もする必要もなく修学旅行などの行事が豊富にあって、青春真っ盛り、という時期だ。
そんな年とあっては、意中の人とどうしても一緒のクラスになりたいと思うのは、仕方のないことなのだろう。
ここが男子校である、という事実を考えなければ。
「あ、そうだ。早川たちが花見しようかって。樋口も行かない?」
「お、いいねえ。じゃ、早速・・・」
和希たちは花見の計画を立て始めた。
学校に近い川沿いに、桜の並木道がある。
あまり知られていないのか、花見の穴場スポットだ。
集合場所を決めて、場所取り組と買出し組に別れた。
日下守が、大きめのシートを生徒会室から借りてきてくれた。
「うわ、でかいなあ。みんなで寝れそうじゃん。」
「ほんと、広いねえ。」
場所取り組は樋口と守と和希。
「樋口、俺ここで待ってるから、買出し組手伝ってきてよ。」
和希はシートにごろんと横になって、樋口を見上げて言った。
「和希が一人で待っていられるなら、俺も運ぶの手伝ってこようかな。」
守も立ち上がる。
守たちは和希を残して、店のほうへ歩き出した。
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