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翌二日目は岡山市内を少し巡った後、昼過ぎに電車で京都へ移動。
名所の神社仏閣を団体で見学したあと、今日の旅館に到着する。
昨日と同じように、お腹が痛いと言って、保健医の橋本先生のところに転がり込む。
樋口たちは少し怪しんでいたが、「先生がそう言うなら」と諦めて行った。
「ごめんなさい先生。」
形だけ布団にくるまった和希は、目元だけ覗かせて謝罪した。
「今夜はここに泊まる?」
「いえ、いいです。先生だって男子生徒と二人っきりはまずいでしょ?」
「こんなおばちゃん相手にすると思わないわよ。」
「そんなことないですよ。」
和希はくすくすと笑った。
「でもね、九条くん。私はあなたのほうが心配だわ。こんなかわいい子が男の子に混じってるのよ。何かあったらお父様に申し訳ないわ。」
「大丈夫ですよ。俺にそんな魅力ないです。」
「またそんな事言って・・・・・」
橋本は、困った顔をして和希を見つめた。
この子は分かってない。男だと言っているから無事だけど、万一ばれたりしたら・・・。
きっと日下君も宮城君もこれで苦労しているんだわ、と二人に同情した。
しばらくして、守が迎えに来た。
守はまっすぐ部屋に向かわず、和希を浴場のある階に連れて行った。
「夕方、ホテルの人と、話をしてね。」
守は持っていた袋を手渡しながら言った。
「ちょっと身体に問題があって、一緒に入浴できないから、って言ったら、従業員さんが入る前に入れさせてくれるって。」
そう言って、着いたのは女湯の前。
「ここで見張ってるから、ゆっくり入っておいで。」
渡された袋の中身がタオルだと知って、和希はお礼を言った。
「ありがとう、守。」
「ん、じゃ、待ってるね。」
和希は暖簾をくぐって消えていった。
「おまたせ、ありがとう。」
出てきた和希は、再びお礼を言った。
「ゆっくり入れた?」
「うん。これって温泉?大きくて、広くて、気持ちいいね。」
「そうか、大浴場も初めてなんだっけ。」
火照った肌が、桃色に色づいている。
「うん、初めて。」
「そう・・・。いつか、温泉に行こう。」
「ほんと?嬉しいなあ。」
濡れた髪から、香りが漂う。
守は和希の肩にあったタオルを手に取り、髪を拭いてやった。
・・・このまま部屋に戻すのは止めたほうがよさそうだ。
“女”の匂いを漂わせる和希を、あの中に入れるわけにはいかない。
純が時間を稼いでいてくれているだろう。
守は「少し涼もう」と言って、和希を中庭に連れ出した。
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