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「修学旅行?」
和希が聞き返した。
ここは清稜学院男子寮205号室。
間近に迫った修学旅行に行くのかと聞かれ、少し考えてから答える。
「行くつもりだけど・・・ていうか、行きたい!」
「大丈夫なのかよ。」
純が聞き返す。
「何が?」
「風呂とか、寝るときとか。寮とは違うんだからな。」
「あ、そうか。」
こいつ考えてなかったな、と呆れる。
「でも、行きたい。みんなと旅行なんて、楽しいだろうなあ・・・。」
嬉しそうに答える和希を見て、純はやれやれとため息をついた。
「お前なあ・・・。」二年になって、ますます周りと差が出てきたって言うのに・・・。
気付かないのは本人だけかと、純は密かに思っていた。
『岡山&京都』という微妙に王道なコース。
自由行動の班を決めるよう、時間を与えられた。
「私立なのに海外じゃないんだ・・・。」
今年から同じクラスになった樋口が不貞腐れた声を出す。
「贅沢言うな。親の金だ。」
担任教師が小言を落とした。
「そういや、和希って実家京都だったよな。」
樋口が振り向いて言った。
「うん。でも京都市からは乗り継いで行かないといけないローカルなとこだよ。近畿っていうより山陰っていったほうが近いかな。」
「へーえ。」
初めて知った樋口は、驚いた声を出した。
「ほとんど地元から出たことなかったから、京都のこと、あまり知らないんだ。だからすごく楽しみ。」
「そっか。いろいろ見ようぜ。」
借りてきたガイドブックを広げ、班別行動の計画を立て始めた。
「大浴場って寮のより広い?」
守は「たぶんね」と答えて予定表に目を戻す。
「時間決まってるから、その間に部屋のシャワー使うといいよ。」
「言い訳考えておかないとね。」
「そうだな。寝る時は俺と純の間にしよう。誰かが寝惚けてきても大丈夫なように。」
「平気だよ。」
「それでもだめ。」
色々と面倒なことがあるだろうからと、部屋に戻ってから三人で打合わせをしていたのだ。
和希はウキウキと予定表を眺めている。
「・・・反対は出来ねえな。」
純が和希に聞こえないくらいの大きさで呟いた。
「行くなってこと?」
守は呟きを聞き逃さず返す。
「そうだね。あんなに楽しみにされちゃね。」
くすくすと笑って、しおりを見ている和希に目を向けた。
一日目は岡山・倉敷へ直行して、観光バスで市内を巡った。
大原美術館や民藝館など有名所をバスで巡った後、美観地区を散策。岡山市内に戻って一泊する。
バスの窓側に陣取った和希は、移動中ずっと窓の外を眺めていた。
「何か面白いのあった?」
守が聞くと、
「バスも初めてなんだ。」と嬉しそうに呟いた。
宿泊するホテルについてから、計画通り「お腹の調子が・・・」と言って集団での入浴を免れた。
ぎりぎりまでくっついていた樋口は「えぇ~」と文句を言っていたが、
「部屋で休んでろよ。」と言って開放してくれた。
部屋のみんなは入浴の時間だ。
和希はその隙に部屋のシャワーを浴びた。
どやどやと音がして、みんなが戻ってくる。
「お?和希、風呂入らなかったん?」
「うん、お腹の調子悪くて。でも、シャワー浴びたから汗臭くないよ。」
「そっか、おだいじに~。」
かばんをごそごそとやっていた尾崎がDVDプレイヤーを取り出してきた。
「じゃ~~ん。」
「おお!DVDじゃん、見れんの?」
「ったりめーよ。ほれ。」
出してきたのは、卑猥な文字が並ぶディスク。
「すっげえ!やるじゃん尾崎!」
「鑑賞会しようぜ!!」
生徒たちがテレビの前に集まってきた。
「あぁ~~、眠い・・・。」
突然、純が大きな声をあげて伸びをした。
「俺、眠いから寝るわ。おい、お前も寝ろ。」
「??」
「最近練習きつくてよ・・・。」
純はそう言いながら和希を連れて布団に潜りこむ。
「俺、まだ眠くないんだけど・・・」
「いいから寝ろ。」
有無を言わさず隣に寝かせて布団を被せた。
「おやすみ~。」
守は部屋を仕切るふすまを閉め、部屋を暗くした。
眠くないといいながらも、初めての旅行はやはり疲れが出るらしく、布団に潜ったまま目を閉じていると、和希はそのまま眠りについてしまった。
「アレってやっぱAVだったか?」
「うん。純、和希を連れて行ってくれてありがとう。」
「あいつにあんなもん見せられねえだろ。」
「見たかった?」
「・・・ふざけたこと言うんじゃねえ。」
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