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きっかけがつかめないまま、時間が過ぎていった。
夏休みには合宿もあるし、早く言わないと俺が言う、と純が脅すので、和希は樋口を屋上へ呼び出した。
「あのさ、話してないことがあるんだ。」
樋口は、和希の顔を見下ろした。
まだ躊躇っている和希を見て取ると、樋口は笑顔を作ってこう言った。
「なんだよ、俺を信用しろよ。何を言われたって、俺、友達やめねえって。」
和希が顔を上げた。
目が合う。
「俺・・・女なんだ。」
樋口の顔が、硬直する。
目は合わせたまま、逸らすことはしない。
だが、やっぱり・・・。
「あ・・・あはは・・・。」
「?!」
樋口は急に笑い出した。
「うわマジ?やっぱそうだったんだー。いやー、ちっとも驚かねえよ。なんかやっぱり~?って感じ。」
なるべくさらり、と言ったつもりだった。
和希のほうが、驚いた顔で見つめている。
「え・・・とさ、証拠っていうか、証明するものが、何もないんだ。戸籍も男になってるし。」
「え?そうなの?男装してるだけじゃないんだ。」
樋口は何も気にしてない、といった風に聞いてきた。
「なんだかすっげー複雑な理由がありそうだな・・・。ああ、安心しろよ。誰にも言わねえし、俺にできることがあったら、協力すっから。」
樋口・・・。
和希はざっと事情を説明した。
「ずっと、騙してたみたいで悪かった。本当にごめん。」
「謝ったりするなよ。なんかそっちのほうが悲しくなる。」
樋口はもう笑っていなかった。
いつもと違って、真剣なまなざし。
「あいつら・・・純と守は知ってんだろ?」
頷くと、「やっぱり」とつぶやいた。
「純って、やっぱ恋人?」
「いや、恋人ってワケでは・・・。」
和希はふと考えた。
キスしたり、身体に触れられたりする関係は、やはり恋人と呼ぶのだろうか。
友達と恋人の境界線は、どこにあるのだろう。
「俺さ、てっきり守と付き合ってんのかと思ってたのに。」
そう見られてたんだ。そういえば・・・。
「樋口のところにも、守からは連絡ない?」
「俺のとこにもって、もしかして、連絡ねえの?」
「・・・うん・・・。」
「うわっ、なんでだよ?あいつ、なに考えてるんだ??」
樋口は頭を抱えてしゃがみこんだ。
「・・・俺、最後のほう、なんだか避けられてて・・・。」
「そんなこと・・・。ああ、でもなんだか解かった気がする。」
樋口はしゃがんだまま和希を見上げて言った。
「辛かったんだよ。見てるだけなのが。・・・俺と、おんなじだ。」
和希は理解できていない顔をしている。
「ああ、俺よりもっと、だろうな。・・・でもよー、連絡よこさねぇってのは酷くね?どんだけ心配してるかってんだ。」
「ん・・・でも、辛かったなら、相談してくれればよかったのに・・・。」
樋口は呆れた顔で、和希の横顔をながめた。
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