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超自己満足小説
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俺が美郷をどう思っているかなんて、考え直さなくても分かるじゃないか。
秋夜は松江の言葉を繰り返し頭の中で再生してみたが、これといってヒントになるようなことは浮かんでこない。
美郷・・・。
小さな赤ん坊だった美郷。
姉の病室で、寄り添うようにして本を読み続けていた美郷。
葬儀の中、じっと耐えるように俯いていた美郷。
一緒に帰ろうといって差し出した秋夜の手を取った美郷。
学校行事へ参加しに行った秋夜を、恥ずかしそうに友達に紹介した美郷。
はにかむような笑顔が、今のような硬い表情に変わったのはいつからだったろうか。

数年前、あれは確か、高校入学直後くらいだったと思う。
友達と映画を見て来たという美郷は、帰宅したばかりの秋夜に添い寝を求めた。
「バカだなあ・・・そんなに怖いのなら断ればよかったのに。」
「始まるまでホラーだって知らなかったから。」
しょうがないなあ、と秋夜はネクタイを外して美郷のベッドの脇に腰掛けた。
ベッドに横になった美郷は、うれしそうに秋夜を見上げる。
「風呂入ってないから、お前が寝るまでここにいてやるよ。それでいい?」
「はい。」
秋夜が美郷の髪をそっと撫でてやると、美郷はゆっくりと目を瞑った。
「秋夜さん・・・。」
「なに?」
「秋夜さんにとって、私は女の子として見えてるんでしょうか?」
「なにお前、実は男の子だったのか?」
「違います!!」
きっと目を見開いた美郷は、すぐにぷいっとふくれて布団の中に潜り込んだ。
「・・・叔父とか姪とか、そういうこと一切関係なかったとしたら、私のことちゃんと女として見てくれるんでしょうか?」
くぐもった声だったが、確かにそう聞こえた。
秋夜はその言葉の意味を必死に考えた。
大分時間が経ってから、秋夜はそのことについて聞き返そうと思い、布団越しに声をかけた。
「美郷?」
美郷からの返事はなかった。
「寝たのか?」
やはり返事がない。
仕方がない。
「おやすみ、美郷。」
秋夜が明かりを消して部屋を出るとき、わずかに布団が動いたような気がしたのだが、気のせいだと思い直して扉を閉めた。

そうだ。
確かにあのころまでは、美郷は“笑っていた”。
時折恥ずかしそうに俯くことはあっても、秋夜に笑顔を見せていたのだ。
両親がいない寂しさが少しでも紛れるようにと、美郷には愛をもって接していたつもりだったのだが。
このところのそっけない態度も、思春期独特のものだとばかり思っていたのに。

「松江、あれからずいぶん考えたんだが。」
「何をですか?」
「な・・・何をって、お前が言い出したんじゃないのか。」
「・・・?」
松江は目を泳がせて少し考えた後、「ああ」と一人合点した。
「で、考え直しましたか?」
「・・・俺の愛情が足りなかったと言うことなのかな。」
「・・・・・。何でそういう結論に達しちゃうのかは判りませんが、愛情は十分足りてると思います。むしろ過剰すぎ。」
「だけどあの子は、きっと思っている以上に寂しい思いをしてきて・・・」
「また出たよ叔父バカ。」
松江が横目で見た秋夜は、今にも泣き出しそうなほど情けない顔をしている。
「まずそこから直さないといけませんよ。」
「愛情たっぷりのどこがいけないって言うんだ?」
「美郷ちゃんの親離れもいいかもしれないけど、奥寺さんも子離れしたほうがいいと思いますよ。うざいんですよ、きっと。」
「うざい・・・」
ショックを受ける秋夜の肩をぽんぽんと叩いて、松江はくすりと笑った。
「美郷ちゃん以外に目を向けましょうよ。あ、そうだ。今度一緒に仕事するM商事の子が、奥寺さん紹介しろってうるさいんです。セッティングしますから、飲みに行きましょう。」
「ああ・・・うん・・・」
松江の言葉がちゃんと耳に入っているか、果たして疑問ではあった。


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綾部 叶多
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当ブログについて

はじめまして。
こちらは綾部叶多が管理する妄想小説ブログです。
管理人の萌えツボをひたすら刺激するためだけの話がおいてあります。
管理人はリアル生活において低血糖なため、糖度が若干高めになっております。
お口に合いますか存じませんが、よろしければどうぞご賞味くださいませ・・・。




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