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超自己満足小説
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「美郷の勉強の邪魔をして合格させないという手があるぞ。だが、叔父としてそれではあまりにも酷過ぎるか・・・ぶつぶつぶつ。」
「・・くでらさん、奥寺さん!」
はっと我に返った秋夜は、隣に立つ松江を見上げた。
「何?」
「もう、さっきから何度も呼んでるのに。」
松江はやれやれといった様子で、手にした書類を渡しながら言った。
「これ、校正しておきましたから、最終確認お願いしますよ。・・・また美郷ちゃんですか?」
「なぜわかる?お前何か特殊な能力を持ってるのか?」
「そんなもん持ってませんよ。ったく、デキる男なのに、美郷ちゃんのこと考え出すと思考停止しちゃうんだから。その脳ミソ腐らせるつもりですか。」
「腐らせる言うな。・・・だが、美郷の為なら本望だ。」
「でた!叔父バカ!!」
松江は心底嫌そうな顔をした。
「こうなると仕事にならないから、悩みがあるなら聞きますよ。俺でよければ。」

「そうですか。美郷ちゃんが一人暮らしですか。」
「まだそうと決まってないよ。まずは合格しないと。それにしても、急だったもんでついね。」
昼休みになって、松江を連れて近くの蕎麦屋に入った。
はああ、と溜息をつく秋夜を呆れたように見ていた松江は、湯飲みに手を伸ばしてぬるくなってしまったお茶を啜った。
「きっと、そういう年頃なんですよ。一人暮らしにあこがれるっていう。」
「そういうもんなのか?」
「実の親でさえ気ぃ使うのに、ましてや叔父さんでしょう?気軽に友達呼んだり、彼氏引き入れたりできないじゃないですか。」
「か、かれし?!それは駄目だ。一人暮らししても男は入れちゃ駄目!男子禁制!」
「・・・叔父バカ。実際家を出ちゃったら、毎日見張るわけにいかないでしょう?女子寮にでも入れたらどうですか?」
「女子寮?そうか、その手があったか。ありがとう松江。さっそくK大に女子寮があるか調べてこよう。ああ、そろそろ時間だ、戻るか。」
秋夜は慌しくトレーを返却口に返して、蕎麦屋を後にした。

「美郷、一人暮らしの件だけどね・・・」
K大の周辺の物件情報を集めた秋夜は、美郷の部屋を訪ねて話を切り出した。
「やっぱり一人暮らしをするのはちょっと考え直さないか?」
「・・・駄目ですか?」
「いや、駄目っていうかその、やっぱり心配だし。新幹線使えば通えなくはないと思うんだけど・・・。」
「・・・・・。」
「いや、無理言ってるのは分かってる。だけど一応保護者としてだな。」
「ちゃんと自炊するし、金銭面でもご迷惑をかけるようなことはしません。それでも駄目ですか?」
美郷は不服そうな顔をしていった。
「だから駄目とかってんじゃなくて・・・はああ。」
これはやっぱり反抗期?
姉ならどうしただろう。
「自立、したいんです。」
美郷は秋夜と目を合わせて言った。
「私はずっと秋夜さんの保護下に置かれていました。でももう子供じゃないし、自立しなきゃいけないんです。恩を仇で返すようですが、もう一人でも十分やっていけると思っています。」
「子供じゃないって言うが、お前はまだ未成年だぞ。大人の許可も必要なんだぞ。」
「だから頼んでるじゃないですか。」
「それに、お前一人でなんて本当に生活できるのか?怖い映画を見たって、近くにいなきゃ一緒に寝てやれないんだぞ?」
「そんなのいらないです。」
「た、確かに俺は頼りないかもしれないが、お前のことを実の娘のように・・・」
「それが嫌なんです!!」
秋夜の言葉を、美郷の声がさえぎった。
美郷らしくない荒立った声に、秋夜は愕然としながら聞き返した。
「な・・・なんだって?」
「もう・・・もう嫌なんです。私のことはほっといてください!」
美郷が泣いているのではないかと思い、その顔を見ようと試みたが、美郷は深く頭を下げたままで覗くことはできなかった。
「そうか・・・好きにしろ。」
まるで捨て台詞を吐くかのように静かに言うと、秋夜は扉を閉めた。

やはり美郷は反抗期なのか?
「世のお父さんは大変だなぁ・・・」
思わず口に出すと、向かいの席に座っていた松江がチラッと秋夜を見た。
「なんだ?」
「いえ、いつになく落ち込んでるなあと思いましてね・・・。」
そりゃあ落ち込みもするさ。
美郷が声を荒げるなんて、この6年間で初めてのことだった。
世の中には反抗的で言葉の汚れた娘も多くいるというのに、美郷はなんて育てやすい子だったのだろうか、と改めて思い返す。
その美郷が、「嫌だ」と、「ほっといてくれ」と言う。
「俺、本格的に嫌われちゃったのかも~。」
項垂れて机に伏す秋夜を見て、松江は呆れかえっていた。
「あのですね、奥寺さん。」
伏したまま「あい」と返事が聞こえたので、松江はそのまま会話を続ける。
「世のお父さんは娘に嫌われたくらいでそんなにへこみませんよ。寿命が縮まっちゃう。」
「だから過労死するんだろうが。」
「それとこれとは違うでしょう。第一、奥寺さんは美郷ちゃんにかまいすぎですよ。もう少し距離をとったらどうですか?」
「距離をとるために家を出ると言うんだろうが。」
「なるほどね・・・。それも一つの手かもしれませんね・・・。」
「何がだ。」
むくりと突然起き上がった秋夜に、松江は少し驚きながらも、言葉を選ぶようにしていった。
「少し離れてみて、美郷ちゃんのこと本当にどう思っているのか、考え直したほうがいいですよ。」


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綾部 叶多
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当ブログについて

はじめまして。
こちらは綾部叶多が管理する妄想小説ブログです。
管理人の萌えツボをひたすら刺激するためだけの話がおいてあります。
管理人はリアル生活において低血糖なため、糖度が若干高めになっております。
お口に合いますか存じませんが、よろしければどうぞご賞味くださいませ・・・。




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