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女なんて、嫌な生き物だと思っていた。
媚びて、諂って、甘えて。
気を抜くと、黒い顔を覗かせる。
愚かで醜い。
その考えは、今でも変わらない。
でも、あいつは別格だ。
あいつだって、生物学上は女だっていうのに。
男で育っているからか、見た目のかわいらしさとは真逆の、なかなか男らしい中身。
ストレートな物言いは、辛口だったりする。
誰とでも分け隔てなく接する態度。
その上、意外と頑固で。
意地になって少し涙目になっていることもあるのに、本人は気付いているのだろうか。
もともときれいな顔立ちをしているが、それに追い討ちをかけるかのような、あの笑顔。
あんな顔で、「がんばってね」なんて微笑まれたら、俺じゃなくたって勘違いするだろ。
俺は惑わされない。
同室の奴に恋心を抱くなんて、あっちゃいけない。
自分自身を制して、この二年間過ごしてきたんだ。
以前、守に聞かれたことがある。
「和希のこと、どう思ってる?」
俺は即答した。
「別に。なんとも思ってねえよ。」
その時知った。
あいつが和希に、友達以上の思いを抱いていることを。
「お前は、どうなんだよ。」
「俺は、一度振られてるから。」
守は、和希のそばにいられるならこのままでかまわない、と言っていた。
・・・俺はどうだ?
俺はあいつを、どうしたい?
あいつを手に入れたい、一人占めしたい。
あの笑顔を見られるのは、俺だけにしたい。
あいつの頬に触れ、髪を撫で、抱き寄せて、キスして。
あいつが俺の中で、女になるのを見たい。
机に向かって勉強しながらうとうとしていたはずが、いつの間にかベッドに寝かされていた。
「ありがとう、助かったよ。」
「それじゃあ、おやすみ。」
ドアの閉まる音。
居眠りしてしまった俺を、守に手伝ってもらって自分のベッドに運んだようだ。
あいつ、どこで寝るつもりだ?
俺はまだ寝ている振りをして、様子を伺う。
「あ、時計・・・。」
和希が枕元にある目覚まし時計を取ろうと、俺を越えて手を伸ばした。
「ちょ、ちょっと、純!」
俺は寝ぼけた振りをして、和希に抱きついた。
「ねえ!枕じゃないから!!」
抜け出そうともがく和希。
俺は力を緩めなかった。
「ううう・・・。」
しばらくすると、あきらめたのか和希の動きが止まった。
「・・・あったかい・・・」
小さな寝息が聞こえてくるまで、俺はじっと抱きしめていた。
「こいつ・・・無防備に寝やがって・・・。」
和希の寝顔に向かって独り言を呟き、俺はその細くて柔らかな感触を堪能した。
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