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超自己満足小説
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「やっぱり混んでたね。」
「ちょっと遅くなっちゃったけど、飯食ってこう。」
時間は2時過ぎ。
近くのファミレスに寄って昼食をとる。
「実はね、俺、映画館初めてだったんだ。」
「へ~え。」
そういえば、俺、九条のことあんまり知らないや。
「ガキの頃とか、家族で来なかった?」
「うん。そういう家じゃなかったし。」
「俺んち、正月映画は欠かさず見に行ってたぜ。『団体行動』っつって。オヤジがうるさくてさあ。」
「ふうん。」
九条はニコニコして聞いている。
「俺んち、ねーちゃんいるんだけど、門限7時だぜ?今どき高校生がそんなんでいいのかよって。」
「お姉さん、大事にされてんだよ。」
「そうかねー。俺、そんなんじゃ部活もできねえって言ってやったのよ。」
「樋口って中学のときもバスケ部だったの?」
「まあね。推薦ももらえたんだけど、遠い学校に行く気なくって。家から近い静学にしたってワケ。」
九条は少し驚いた顔をして、俺に聞いてきた。
「推薦って、樋口そんなにうまかったの?」
「ん、まあ、そこそこ。でも、バスケで食っていけるはずねえし、いいんだよ別に。」
「・・・。」
九条はそこで黙り込んでしまった。
「悪りい。俺、なんかまずいこと言った?」
「ううん。」
何か考え事をしている様子で、コーヒーに手を伸ばしたが、ふと思いついたように言った。
「でもさ、好きなことがあるって、いいね。」
「好きなこと?」
確かに俺は、バスケ好きだけど。ギターも好きだし、映画も好きだ。でも。
「将来に結びつかなくても、好きなことがあるって、幸せだよ。」
「そうかな。」
俺にはまだ、九条の抱えているものの正体を、知ることができなかった

寮の近くまで送っていき、そこでサヨナラをした。
「わざわざありがとう。」
「いいって。じゃ、またな。」
「うん、また明日。」
なんだかちょっと、帰したくない気分。
手を振る九条が、なかなか帰ろうとしない俺を見つめて「なに?」という顔をする。
どうしよう・・・。
恋人だったら、女の子だったら、ここで軽く「ちゅっ」とかやっちゃうんだろうけど・・・。
いかんいかん!!
首をブンブン振る俺を訝しげに見て、きょとんとしている。
かわいいなあ・・・。
「・・・また明日。」
俺は雑念を振り切り、九条に背を向けた。

翌日、登校した俺に日下が話しかけてきた。
「昨日はお疲れさま。」
「ああ・・・。」
「和希、すごく楽しかったみたいだよ、ありがとう。」
ありがとうって、お前はあいつの保護者かよ。
こいつとはあまり話したことないし、何を言われるのかと緊張していた俺は、礼を言われて拍子抜けした。
「あまり出歩いたことなかったから、嬉しかったみたい。また遊んでやってくれよ。」
「ああ、そういえば、映画も初めてって言ってたなあ・・・。なんか変わってんな、九条んち。」
「ちょっと特殊だからね・・・。」
日下はちょっと言いにくそうに目を逸らして、遠くを見た。
目線の先に、九条と宮城が歩いてくるのが見える。
・・・・・。
やべえ、俺、かなり本気モードになっちまってるかも・・・。
九条は宮城に髪をクシャクシャにされて怒った顔をしている。
顔を歪めていても、美人さんは美人さんだ。
俺には、そういう趣味は無かったはずなんだけど・・・。
どこかで歯車が狂ってしまったようだ。

映画のお礼だといって、九条は夕飯をおごってくれた。
そんなのはいいからとお断りしたのだが、日曜日にかかった費用はほとんど俺が出していたのを気にしていて、「それじゃあまた樋口と出かけられないよ」なんて脅すから、仕方なくおごられることにした。
寮の近くの店で待ち合わせて、食事を済ませ、帰りにCDショップに立ち寄った。
「これ、中学ん時コピーしてたんだ。」
「コピー?」
「そう、俺バンドやっててギターだったんだ。ライブも何回かやったぜ。」
「ふうん。」
九条はそのCDを手にとって、眺めている。
「今度貸してあげるよ。」
「ありがとう。」
CDを棚に戻して、九条はまた殺人スマイルを見せた。
「俺ね。」
店を出ると、九条は突然話をきりだした。
「樋口に、言ってないことがある。」
「?」
俺は黙って、話の続きを聞くことにした。
「ううん、今はまだ言えない。もう少ししたら、絶対言う。だから、」
九条は立ち止まって、俺を見上げて言った。
「その時になっても、友達、辞めないでね。」
「な、何言ってんだよ。」
俺は少し動揺した。
俺のヨコシマな心を、見透かされたのかと思った。
悪かったよ、俺、そんな目でお前のこと見てさ。
九条の秘密がなんであっても、ちゃんと友達でいるからさあ・・・。
「心配すんなよ。言われなくたって、友達だって。」
俺は一番の笑顔を作って、九条に応えた。
九条はほっとした表情を浮かべ、続けて言った。
「良かった・・・。俺、今が一番幸せなんだ。」
瞳が輝いている。
「存在を否定されない、それだけでも、ここにいて良かったって思うから。」
俺の心を捕らえて放さない、そういう存在に、なった瞬間だった。


・・・樋口が真実を知るのはそれから約二年後のこと。


END


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綾部 叶多
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非公開
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当ブログについて

はじめまして。
こちらは綾部叶多が管理する妄想小説ブログです。
管理人の萌えツボをひたすら刺激するためだけの話がおいてあります。
管理人はリアル生活において低血糖なため、糖度が若干高めになっております。
お口に合いますか存じませんが、よろしければどうぞご賞味くださいませ・・・。




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